和歌山県と公益財団法人わかやま産業振興財団 地域活性化雇用創造プロジェクトでは、今年度最後のDXセミナーとして、令和7年10月28日、和歌山市のホテルアバローム紀の国にて「第5回イノベーション推進のためのDXセミナー」を開催し、63名の方に参加いただきました。新たな試みとして、今回は講演と討論の2本立てで開催しました。
ビジョンありきで生成AIを使おう
株式会社デンソー 研究開発センター シニアアドバイザー 成迫 剛志 氏のご講演から始まりました。題目は 「『物理AI(フィジカルAI)』 ~生成AIによってこれまでの世界は大きく変わる。そして次に来るのは、ロボティクス技術による生成AIのリアル世界への召喚だ。~」
日本は新技術を効率化・コスト削減に使うことに長けていますが、一方でこれらを新価値・新ビジネス創造への挑戦に使うことが苦手であると成迫氏は分析。生成AIの活用においても同様の傾向が見られると指摘します。また、キング牧師の言葉 “I have a dream.” を例にとり、新価値創造には、実現したい未来の構想・ビジョンが不可欠であると語りました。
また、今やクリエイティブ領域にも高い能力を発揮するようになった生成AIが、サイバー空間を飛び出したらどうなるのでしょう?と問いかけられました。同社では「人とロボットが共に働く世界」という未来を実現する構想として、エンボディドAI(身体性AI)の実証実験に取り組んでいます。講演の中では、人とロボットが一緒に働く、複数のロボットそれぞれが自律的に状況を認識し、できること・するべきことを判断して一緒に働く動画の紹介がありました。
- エンボディドAI(身体性AI)についてのコラムはこちら
https://yarukiouendan.or.jp/waka-cheer/column/column-13694/

株式会社デンソー 成迫 氏
大歓談? DXのその先を考える
講演に続いて討論がスタート。今回ご登壇いただいたのは以下のみなさんです。
- 和泉 憲明 氏(株式会社AIST Solutions VICE CTO)
- 元山 文菜 氏(株式会社リビカル 代表取締役)
- 成迫 剛志 氏(株式会社デンソー 研究開発センター シニアアドバイザー)
討論のモデレーターには、ノンフィクションライターの酒井 真弓 氏をお迎えしました。<大討論>と銘打ったものの、登壇者の人柄や酒井氏の丁寧な進行もあって、壇上は和やかな雰囲気に。しかしそこは第一線でご活躍の方々ですので、笑いを交えた穏やかな語り口でありつつも、キレのあるやりとりが繰り広げられました。
AIは人間の仕事を「奪う」のか?
成迫氏の講演を受けての酒井氏の問い「AIは夢(ドリーム)なのか悪夢(ナイトメア)なのか?」から討論はスタート。
成迫氏は、「生成AIに代替される作業は確かにあるが、これを悪夢だ!と嘆いている間に他者に先を越されることがリスクになる。」とコメント。和泉氏は、「革新的な技術があらわれる度に拒否反応(産業革命期の印刷機に対する打ち壊し運動など)が起こったものの、結果的には、社会全体を大きく発展させ、その技術ありきの新たな産業・文化が生まれることの繰り返しであった。」と成迫氏のコメントを補強しました。生成AIも同様で、全体を俯瞰し、不要な業務を、まるごとなくすのが変革の本質なのであり、生成AIありきの産業・文化を見据えることが経営者として重要になってくるという結論をお話しされました。
経営者は生成AIとどう向き合うべきか?
元山氏は自身の著作等を学習させた元山AIをつくり、このAIに対して社員が相談や壁打ちを行うことで、自身の業務効率化ができているとのこと。このような自身のご経験をふまえ、経営者が率先してAIと仲良くすることが重要であると語られました。
「社長AIにより多様性が失われ、社員が社長コピーになってしまうのでは?」 という成迫氏のちょっといじわるな問題提起に対して、和泉氏は一つの回答として、「社員はAIによって経営者の思考を踏み台にできるので、むしろそこから自身の得意な能力や創造性を発揮でき、新たな挑戦につながるのでは。」と提示しました。進行役の酒井氏も、AIにインタビューの文字起こし等をやってもらうことで、自身のクリエイティブ作業に充てる時間が多くなったと述べ、納得のご様子でした。
登壇者の間で一致しているのは、生成AIは、アルバイトさんや新入社員から経営者まで皆が普段使いする「日用品」なのであり、「一部エリートのための特別なもの」という考えを捨て去ることの重要性です。生成AIは使う人の意図や指示によって結果が異なるもの。それは経営者の意思・明確なビジョンがあれば、生成AIは経営者に応えて真価を発揮し、心強いパートナーとなることを示しています。非常に示唆に富んだ討論となりました。
新たな試み<大討論>と、今後に向けて
今回初めて開催した討論でしたが、登壇者のやりとりを通じて新たな視点が生まれたり、同じテーマについて異なる角度からの補足や具体的な例示が加わったりと、より多角的に生成AIを理解いただける機会になったのではないでしょうか。
多角的に情報を捉えられる討論形式の良さを発見するとともに、情報を整理してお伝えする従来形式の良さも再認識しました。今回の試みで得たものを、今後のDXセミナーにも活かしていきます。

大討論中の登壇者のみなさん(左から和泉氏、元山氏、成迫氏)

壇上で進行役を務める酒井氏
DX、生成AIのご相談は「地プロ」まで
本セミナーは、和歌山県が厚生労働省の採択を受けて実施する「わかやま人材確保・育成支援プロジェクト」の取組のひとつです。
わかやま産業振興財団 地域活性化雇用創造プロジェクト(地プロ)では、このようなDXセミナー開催のほか、DX推進員による相談を随時お受けしています。
当プロジェクト(地プロ)は、和歌山県が厚生労働省の採択を受けて、県内企業がDX推進により企業の経営力を強化することで、安定的かつ良質な雇用の創出を図る取組です。