和歌山県と公益財団法人わかやま産業振興財団 地域活性化雇用創造プロジェクトでは、令和7年5月28日、和歌山市のホテルアバローム紀の国にて「第1回イノベーション推進のためのDXセミナー」を開催し、117名の方がセミナーに参加されました。
DXイノベーションの加速のためにすべきこと
1人目の講師として、三菱電機株式会社の執行役員で、DXイノベーションセンター長でもある朝日 宣雄 氏をお招きし、「デジタル基盤“Serendie” によるイノベーションの加速」について、講演いただきました。

三菱電機株式会社 DXイノベーションセンター長の朝日 宣雄 氏
これまでの製造業の主流であるウォーターフォール開発※は、変化が早い現代においては、変化に対応する手戻りが多く発生するため、効率が悪くなってしまいます。朝日氏からは、アジャイル開発※により、数値目標の達成よりも顧客価値/顧客受容性を重視していく姿勢の重要性について語られました。講演後半には、三菱電機株式会社の「Serendie(セレンディ)」が紹介されました。「Serendie」は自社データ、自社人財だけでなく、さまざまな知識や人財が集まるデジタル基盤として活用されます。さらに、デジタル基盤からスクラム開発(アジャイル開発の一種で、短期間の開発サイクルを繰り返し開発を進める方法)の活発化により、新たなソリューションが提供され、さまざまな分野での課題解決やイノベーションが加速することが示されました。
ウォーターフォール開発とは?
ウォーターフォール開発とは「あらかじめ開発計画を決めた上で、組織として役割を分担し、完成品のリリースを目指す開発」のこと。
アジャイル開発とは?
アジャイル開発とは「各チームがそれぞれ自律的に小さな単位の開発とリリースを繰り返し、改善を繰り返していく開発」のこと。
引用元:講演資料
●「Serendie」についてはこちら(三菱電機株式会社のサイトに移動します)
和歌山県で生成AIはどのように活用できるか
2人目の講師は、株式会社野村総合研究所 シニアシステムコンサルタント 内山 咲 氏です。内山氏からは「生成AI×和歌山 ―産業・土地・人の未来図」について、講演いただきました。

株式会社野村総合研究所 シニアシステムコンサルタントの内山 咲 氏
自身も生成AIの登場により仕事を大きく変えられたと語る内山氏。生成AIの歴史(技術変遷)に触れた後、和歌山の産業において生成AIがどのように利用できるのか、利用によりどのような未来がやって来るのか、自動運転技術や動作生成AIなどの具体例を交えて紹介されました。また、実際に生成AI(Gemini 2.5 pro DeepResearch)を利用して、和歌山の観光プランの素案をデモで壇上で披露されました。最後に、生成AIと付き合っていくための心構えとして、生成AIは夢のツールではなく、留意すべき事項も多くあり、あくまでCo-pilot(コ・パイロット、副操縦士)として利用すべきであると述べられました。
日本の状況 ~国産LLMとIOWN構想
最後は、日本電信電話株式会社 執行役員で研究企画部門長の木下 真吾 氏より「進化するAIとの付き合い方 ~NTTが研究開発する生成AIやIOWN(アイオン)等の先端技術が果たす役割~」について、講演いただきました。

日本電信電話株式会社(NTT)研究企画部門長の木下 真吾 氏
冒頭では、生成AIの一種で自然言語処理に特化した「大規模言語モデル(LLM)」の仕組みをお話いただきました。LLMはまるで人のような受け答えをしますが、人のように論理立てて思考・回答しているのではなく、膨大なテキストデータを分析し、次に出てくる確率の高い単語を推論して、結果を生成しているとのこと。また、生成AIの精度を上げるために、世界では桁違いの投資競争が行われていることに触れ、NTT発(=国産)の、コンパクトかつ専門性の高いLLMである「tsuzumi(ツヅミ)」、そして増加の一途をたどる消費電力に対するソリューションとして「IOWN構想」についてご説明をいただきました。さらに、進化によってLLMが人間には理解不能の『人智を超えた』問いや答えを生み出す可能性に言及し、LLMのブラックボックス部分を解明する研究にも触れられました。
●「IOWN構想」についてはこちら(NTTグループのサイトに移動します)
3名の講演終了後、名刺交換を含む講師・参加者交流の場を設けました。
次回のセミナーは7月1日開催!
次回7月1日(火)のDXセミナーは「県内企業が進めるDX ~DXチャレンジサポートの成果~」と題して開催いたします。令和4年度~令和6年度で、和歌山県が実施した「DXチャレンジサポートプログラム」に参加し大きな成果を上げた県内事業者の方々が発表します。VISIONの立て方、人材育成、体制整備など、自社のDXを進めるうえで、参考にしていただける内容となっていますので、是非ご参加ください!
※本セミナーは、和歌山県が厚生労働省の採択を受けて実施する「わかやま人材確保・育成支援プロジェクト」の取組のひとつです。
わかやま産業振興財団 地域活性化雇用創造プロジェクト(地プロ)では、このようなDXセミナー開催のほか、DX推進員によるお悩み相談を随時お受けしています。
当プロジェクト(地プロ)は、和歌山県が厚生労働省の採択を受けて、県内企業がDX推進により企業の経営力を強化することで、安定的かつ良質な雇用の創出を図る取組です。