CASE STUDY 事例紹介

「パッケージデザインは正直、苦手なんです」 老舗和菓子メーカーが選んだ“副業人材と共に創る”という決断

株式会社山崎屋

株式会社山崎屋

「パッケージデザインは、正直苦手なんです。」

そう話すのは、和歌山県紀の川市で和菓子製造を手がける株式会社山崎屋の代表取締役、堀翔太さんです。

餡がたっぷり詰まった、昔ながらの大福餅。
山崎屋は地域で長く愛されてきた老舗和菓子メーカーです。
製造技術には自信がある。
味にも誇りがある。

しかし、新商品の開発が進むなかで、ひとつの壁にぶつかりました。
「この商品の魅力を、どうやって伝えればいいのか」

そこで堀さんが選んだのは、
デザイン会社への外注でも、社内制作でもない、
“副業人材と一緒に商品を創る”という選択でした。

これは、地方企業が外部のプロフェッショナル人材と出会い、
新しい価値づくりに挑んだ記録です。

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副業人材は「外注」ではなく「チーム」

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外部人材の活用に興味がある方、専門家の力を借りたい方

地域の味を守る老舗企業

株式会社山崎屋の外観

株式会社山崎屋

株式会社山崎屋は、和歌山県内で長く食品製造業を営む和菓子メーカーです。
創業以来、地域の小売店やスーパーへの卸売を中心に事業を展開。
現在では国内大手スーパーや菓子メーカーのOEM製造も担うなど、確かな製造力を持つ企業へと成長しました。

そんな同社が近年取り組んでいるのが、自社ブランド商品の強化です。

「町の大福屋といえば山崎屋。そう言ってもらえる存在になりたい」
と堀さんは語ります。

地域のフルーツから生まれた新しい大福餅

紀の川市で採れたはっさく果汁を練りこんだ大福餅。他にいちご、キウイフルーツがある。

象徴的な取組が、紀の川市と連携して進めたフルーツ大福餅の開発です。

紀の川市は“フルーツ王国和歌山”を象徴する地域のひとつ。特に柑橘類の生産が盛んで、はっさくの生産量は日本一を誇ります。

「地元のフルーツのおいしさを生かした菓子を創りたい。それを通じて、地域の魅力を届けたい」

その思いから、新商品の構想は2023年にスタートしました。約1年をかけ、商品開発は順調に進みました。

しかし、完成が近づくにつれて、堀さんの中にある疑問が生まれます。

直面した課題「想いをどう表現すればいいのか」

納得のいく商品が完成した一方で、その魅力や背景をデザインとして表現する経験は十分ではありませんでした。

「自分たちの想いや商品の良さを、どうすればお客様に伝わる形にできるのかが分からなかったんです」

さらに堀さんは、経営と並行して生産責任者も担っています。
受注製品の製造や工程管理に追われる日々のなかで、新商品の外装デザインも限られた時間で検討していかなければなりませんでした。

商品はできた。
けれど、その価値をどう伝えるか。
それが次の課題でした。

検討した3つの選択肢

堀さんは、パッケージデザイン制作について、3つの方法を考えました。

1 社内で制作する

コストは抑えられるものの、
専門知識がなく、商品の魅力を十分に表現できるか不安が残ります。

2 デザイン会社へ依頼する

完成度は期待できます。
しかし、商品開発の背景や地域への思いがどこまで共有できるのかは分かりません。

3 専門人材と一緒に創る

この第三の選択肢として浮上したのが、副業人材の活用でした。

副業人材という選択

堀さんは、紀の川市の担当者からの紹介で、
公益財団法人わかやま産業振興財団プロフェッショナル人材戦略拠点に相談しました。

活用したのは
副業・兼業人材活用促進補助金(補助対象経費の10分の8以内を補助。補助上限450千円)
という制度です。

大企業などで実務経験を積んだプロフェッショナル人材が、期間限定で企業の課題解決を支援する仕組みで、企業が人材紹介会社のサイトを通じて人材を募集します。

募集を開始すると、全国から11名の応募がありました。

オンラインで面談を行い、最終的に契約したのは、企画・デザイン・マーケティング業界での経験を持ち、パッケージデザインやブランド設計のプロフェッショナル人材でした。

不安と決断

もちろん、不安もありました。

  • 投資に見合う成果が得られるのか
  •  副業人材とうまく共同作業ができるのか

それでも堀さんはこう振り返ります。
「この制度(副業・兼業人材活用促進補助金)を知ったとき、“使わない”という発想は浮かびませんでした。なぜなら、単なる業務委託ではなく、商品の背景や自分たちの想いを整理し、“伝わる形”に落とし込むところまで一緒に取り組めると感じたからです」

副業人材と、半年間の共同プロジェクト

副業人材との関係は、単なる業務委託ではありません。

約半年間にわたり、商品開発の背景や地域への思いを共有しながら、何度も議論を重ねていきました。さらに副業人材に和歌山まで足を運んでもらい、関西主要都市の店舗を巡るフィールドリサーチも実施。

その過程で、

  • 山崎屋の強み
  •  商品に込めた思い
  •  誰に届けたいのか

といった要素が少しずつ言語化されていきました。

「物語が伝わるパッケージデザイン」が完成!

こうして、単なるデザインではない「物語が伝わるパッケージデザイン」が完成しました。

新商品「紀の川 マリあんジュ(KINOKAWA MariAnge)」(2026年発売予定)のパッケージデザイン

紀の川市と共に開発した新商品は、「紀の川 マリあんジュ(KINOKAWA MariAnge)」と名付けられました。

『紀の川の果実と伝統的な和菓子「大福」が出会いやさしく包み込んだ新感覚スイーツ。伝統の「あん(餡)」と、紀の川の果実をマリアージュ(フランス語で”調和・出会い”)”させた小さな幸福の一粒です』(紀の川 マリあんジュ コンセプト・ストーリーより)

和洋折衷の世界観を持つブランドデザイン。これまでの山崎屋の商品とは一線を画す、新しい表現が生まれました。

「紀の川 マリあんジュは、まずは地域の駅や高速道路の休憩所など、地元の方や訪れた方に手に取っていただける場所から広げていきたいと考えています。
この商品をきっかけに、『和歌山にはこんな美味しいものがあるんだ』と感じてもらえたら嬉しいですね。

自分たちの商品が地域の魅力を伝える存在になり、その積み重ねが地域の活性化につながっていく。そんな循環を創っていけたらと思っています」

と堀さんは展望を語ります。

決断を振り返って

「副業人材の力を借りることで、自社だけでは見えない世界を見ることができました。」
堀さんはそう語ります。
自社だけで完結させるのではなく、必要な専門性を柔軟に取り入れる。
その決断が、老舗企業の新しい可能性を広げました。

老舗企業の今回の挑戦は、
“守るために変わる”という決断の記録でもあります。

堀 翔太さん プロフィール

1991年 旧那賀町(現紀の川市)生まれ
大学卒業後、大阪府内の金属加工メーカーに就職。仕事にやりがいを感じる一方で家業への思いが募り、和歌山へUターンする。
2018年に代表取締役社長に就任。当初は手探りの状態からのスタートだったが、多くの人々の支えにより困難を乗り越えてきた。
現在は「支えてくれた方々に恥じない経営」と「お客様に満足していただけるものづくり」を信条に、日々仕事に向き合っている。

会社名 株式会社山崎屋
所在地 〒649-6621
和歌山県紀の川市名手西野348-1
設立 1993年
TEL 0736-75-2141
URL https://www.yamasakiya.co.jp/
事業内容 食品製造販売
従業員数 19名

堀さんが活用した「副業・兼業人材活用促進補助金」の詳細はこちら

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