RAG(=検索拡張生成)とは?
この課題を解決する鍵として、生成AIの活用が期待されていますが、一般的な生成AIは社内の固有の事情までは理解してくれません。
そこで注目されるのが「RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)」という新しい技術です。これは、企業の内部に蓄積された膨大なデータの中から必要な情報を「検索」し、その情報に基づいて生成AIが最適な回答を「生成」する仕組みです。
いわば、社内のデータベースを教科書として、AIが学習し、回答してくれる家庭教師のような存在といえるでしょう。
中小製造業の現場におけるRAGの活用例
では、RAGは中小製造業の現場でどのように活用できるのでしょうか。その例を3つほど考えてみましょう。
生産現場

第一の例は、生産現場での活用です。例えば、製造ラインでトラブルが発生した際に、若手の作業員がその状況を日常の言葉でRAGシステムに入力します。
するとシステムは、過去のトラブル報告書、メンテナンス記録、ベテラン技術者が残したメモなど、社内の膨大なデータの中から類似の事例を瞬時に探し出し、「過去の〇〇のケースでは、この部品を調整して解決しました」といった具体的な対処法を提示してくれます。これは、これまで個人の経験の中に埋もれていた「知恵」を組織全体で「共有化」し、迅速な問題解決を可能にします。
研究開発部門

第二の例は、研究開発部門での活用です。新製品のアイデアを検討する際、過去の実験データ、技術レポート、さらには顧客からの要望やクレーム履歴などをRAGに読み込ませることで、AIを「壁打ち相手」にすることができます。開発者はAIとの「対話」を通じて、過去の失敗事例から学び、新しい技術の組み合わせのヒントを得るなど、イノベーションのきっかけを掴むことができるでしょう。
顧客管理部門

第三の例は、顧客管理への応用です。営業担当者が顧客から専門的な問い合わせを受けた際、RAGシステムを通じて技術資料や過去の取引履歴を参照し、その場で的確な回答を生成できます。これにより、顧客満足度を高め、「カスタマーオリエンテッド」な姿勢を貫くことが可能となります。
企業内に眠る過去の膨大な「データ」を活用しよう
企業内に眠っている過去の膨大な「データ」は、整理・活用されて初めて価値ある「情報」や「知識」となります。RAGは、その「知識」を企業の競争力である「知恵」へと昇華させるための強力なツールです。自社に眠る情報の価値を再認識し、来るべき変化の時代に備えるため、RAGの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
国内大手鉄鋼企業の製造部門で生産管理・品質管理を経験後、エンジニアリング部門でニューヨークに駐在し米国への鉄鋼技術販売に携わる。その後ドイツ大手貴金属精錬企業に転じ、副社長としてベルギー研究所副所長および東アジア地区支配人を兼務、中国、台湾、韓国、日本の支社長として会社設立・業務拡大に成功。その間、京大、阪大、中国東北大にて後進を育成。現在、地プロ事業統括者、デジ田地域DXプロデューサー、混声合唱団スティールエコー常任指揮、中国東北大名誉教授。