COLUMN コラム

vol.03 “産”と“学”はこうしてつながった

こんにちは和歌山大学産学連携イノベーションセンターです。

このコラムでは学内にある組織の一つの産学連携イノベーションセンターが、本学が取り組んでいる産学連携を中心にその活動を紹介していきます。

今回は、和歌山大学が取り組んだ産学連携の事例を紹介します。

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「知る」のアップデート

産学連携で企業の課題を解決し、新ビジネスを創出する

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こんな人にオススメ!

技術・商品開発に、外部の力を借りたい方、自社技術を持て余している方

企業の方とお話しすると、「産学連携って何?」「産学連携ってどうやるの?」と聞かれることがあります。確かに“産学連携”という言葉を聞く機会はそれほど多くないかもしれませんし、聞いたとしても何をするかはさっぱりわからないかもしれません。

ただ、産学連携をうまく活用すると、これまで企業が抱えていた問題を解決できたり、新しいことに取り組むことができたりするかもしれません。

そこで、これまでに本学が取り組んできた産学連携の取り組みのなかで、もっともうまくいったものを紹介します。

主人公は教育学部の教員

教育学部の山口真範教授は、和歌山県かつらぎ町の出身で、2008年に和歌山大学教育学部に着任しました。教育学部の教員として理科教員の育成のために学生を教育しつつ、糖鎖の合成に関する研究に取り組んでいます。糖鎖を機能性食品や医薬品、化粧品などに活用して、人類の役に立てようとしています。

教育学部 山口真範教授(解体新書より)
    教育学部 山口真範教授(解体新書より)

“糖鎖”って何?

糖鎖とは、たくさんの糖がグリコシド結合によって鎖についているもので、ついている糖の数や種類によって効果がいろいろと変わります。核酸(ゲノム)、タンパク質に続く第三の生命鎖といわれており、人体中に多く存在していて人体活動に大きな影響を与えていることが知られています。糖鎖の役割として、細胞表面にある糖鎖は、他の細胞、細菌、ウイルスに接着する際の結合部になります。細菌・ウイルス感染などに関わることから『糖を制する者は病を制す』とも言われているそうです。

糖鎖の新しい合成方法を開発

山口教授は、糖鎖の次世代型合成方法を開発しました。有用な機能を有する多量の糖鎖を簡便に得ることが可能となり、これまでに約200種類の糖鎖の合成に成功しました。この研究に関して国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム(START、2012~2015年)や研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP育成型、2020~2023年)に採択され、関連する特許も20件保有しています。この特許を企業の活用してもらい新製品開発の手助けになるよう「糖質応用研究コンソーシアム」を立ち上げました。

糖質応用研究コンソーシアムの構想図

糖質応用研究コンソーシアムの構想図

コンソーシアム参加企業と一緒に商品化

このコンソーシアムでは年1回程度の会合を開催して研究成果の迅速な共有を行ったり、知的財産権の優先的使用を認めたりしています。コンソーシアムの活動の一例として、本学で開発した、廃棄物であるサケの頭部の軟骨と梅干しの生成時に生成される梅酢を用いて「梅プロテオグリカン🄬」を製造する方法をコンソーシアム参画企業にライセンスアウトし、製品化することになりました。山口教授が共同研究契約を結んで技術指導をすることで富士化学工業株式会社(和歌山市)が量産体制を構築し、新中村化学工業株式会社(和歌山市)が市場流通を担当することで、「梅プロテオグリカン🄬」を商品化(わかやま中小企業元気ファンド事業活用)して売り出しています。特許取得済、国内外の商標登録済みで、これから国内外に市場に展開していく予定です。

新聞などにも取り上げられました

この取り組みに関しては多くの方から注目していただいていているようで、ニュース和歌山で取り上げられ、2022年のニュース和歌山大賞 科学賞をいただきました。

また読売新聞オンラインでも紹介されています。

商品化のその先に

この「梅プロテオグリカン🄬」を用いて新商品開発を検討したいという企業も出てきていますが、山口教授はさらに研究を積み重ねて、「糖鎖」を活用した機能性新商品の開発及び「医療関連製品・医薬品」などへの応用に関心のあるパートナー企業を探しています。

以上、教育学部山口教授の研究成果から企業との共同研究で商品化ができた、産学連携の事例を紹介しました。コンソーシアムを利用した少し特殊な事例ですが産学連携をお判りいただいたでしょうか?もしいまある困りごとや新製品開発で本学に相談したい方がいらっしゃいましたら、まずは産学連携イノベーションセンターまでご連絡ください。お話の詳細をお伺いして適切な研究者におつなぎします。

次回は、いくつかある産学連携の制度についてご説明します。

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