COLUMN コラム

vol.09 大学の特許のはなし

こんにちは、和歌山大学産学連携イノベーションセンターです。
このコラムでは学内にある組織の一つの産学連携イノベーションセンターが、本学が取り組んでいる産学連携を中心にその活動を紹介していきます。

大学教員の研究成果の公表方法としては、研究論文の投稿や学会発表がよく知られていますが、特許の出願というのもその一つだったりします。研究で得られたアイディアや技術を特許として権利化して企業に使っていただこうというものです。

文部科学省も大学における特許の積極的な取得・活用を促すため、いろいろな施策を用意しています。今回は大学における特許の話をしたいと思います。

アップデートイメージ

「知る」のアップデート

産学連携で企業の課題を解決し、新ビジネスを創出する

おススメイメージ

こんな人にオススメ!

技術・商品開発に、外部の力を借りたい方、自社技術を持て余している方

研究の成果が特許に

共同研究などで得られた新しい技術を、その研究に携わった企業が独占して使用でき、他の企業にタダで使われないように、特許を出願することがあります。卒業研究などにおいても、これはイケると思われるアイディアや技術は、特許として出願することがあります。

出願する前に学術講演会などで発表してしまうと「公知」となるため特許にならなくなるので、多くの場合は急いで出願することになります。卒業研究では結果が得られてから卒研発表会までに時間がないので、発表会に参加する方全員に「秘密保持契約書」にサインしていただき、内容について口外しないという約束のもとにやっと発表できるようになります。

知財担当者と詳細な打ち合わせをして出願

アイディアや技術を特許に出願すると決めたら、まずは本学の弁理士資格を有する知財担当者と面談をして、その研究のどの部分を特許にするかを詳細に打ち合わせます。その後、既に他の人が特許にしていないかを調査して、問題なければ特許事務所に依頼するなどして特許庁に出願します。

場合によってはその研究に取り組んだ学生も、そして共同研究で取り組んだ成果であれば企業の方も共同出願者として出願します。

共同研究の場合は契約時に

共同研究で取り組んだ成果として生まれた特許については、出願手続き等は誰が担当するのか、権利の持ち分をどうするのか、必要となる費用はだれが負担するのかなどは、原則として共同研究の契約時にしっかり決めることが多いです。

多くの場合その寄与度によって持ち分が決まり、費用に関しては企業側にお願いすることが多いです。

実施料収入を考慮して管理

出願前後にはその特許を使いたい企業があるかを調査します。以前は大学の技術移転を専門に請け負う会社に依頼していましたが、現在は独自の調査を行っています。このときの情報などを参考に権利化するかを本学の「知的財産管理室会議」で議論し、ニーズがありそうであれば権利化します。ここで知財担当者の目利きが重要になってきます。

特許を維持するには毎年結構なお金がかかり、特許庁に支払うその維持費(年金)は年々値上がりしていきます。そこで出願した教員や企業と相談しながら、年金を支払うタイミングで維持を継続するかを「知的財産管理室会議」で検討します。

知財担当者は少ない特許でいかにライセンス料を稼ぐかを常に考えています。その結果、数年前に「教員一人当たりのライセンス料収入」で全国の大学のランキングの上位に入ったことがあります。

JSTによる知財支援

単に特許を取得しただけでは誰も使ってくれません。大学から多くの企業に紹介して、その技術やアイディアを売り込まなくてはなりません。

国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)では、そのような機会としてvol.8のコラムで紹介した大学見本市を開催したり、新技術説明会という大学単位もしくは技術分野単位で特許技術を紹介する機会の開催を手助けしてくれたりしています。また高額が必要となる海外で特許出願の支援や大学で保有困難になった特許の譲受(知財集約)をしています。

ライセンス料をいただきます

権利化された特許はライセンス料をいただくことで使っていただけますが、他の企業と共同出願した特許は利用していただくことが難しい場合があります。開放特許一覧(リンク)はリンク先のページに掲載しています。

他の方でも利用していただくことは可能ですが、ライセンス契約を結んで実施許諾を受けていただく必要があります。ライセンスフリーというわけではありません。いただいたライセンス料の一部は出願者に還元されます。

特許を活用して商品化

本学で研究の成果から得られた特許を最も多く保有しているのはvol.3のコラムでもご紹介した教育学部の山口真範教授です。日夜、糖鎖の新しい合成方法の開発に取り組んでいます。

富士化学工業株式会社はサケの頭部の軟骨と梅干しの製造時に生成される梅酢の廃液から「梅プロテオグリカン®」を製造する技術の特許を使用して量産化に成功しました。この「梅プロテオグリカン®」を使用して紀陽除虫菊株式会社は「ほろ酔い ご褒美風呂 梅の滴」という入浴剤を商品化しました。

現在は和歌山大学生協や各種ネット通販などで入手可能です。
紀陽除虫菊株式会社 ほろ酔い ご褒美風呂 梅の滴

「梅プロテオグリカン®」の商標登録も本学で出願しました。

和歌山大学における特許を詳しく知りたい方はこちらへ

今回は本学の特許に関する話でした。かなりかいつまんで話をしているので詳細は下記リンクのWebページを見て確認してください。

和歌山大学の特許(リンク)

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