解散の危機に瀕した⼯場⻑の決断
今回の相談者であり、現在はエイワテック代表取締役を務める楠本敬弘氏は、県内の製造業で工場長として勤務していました。
その会社はオーナーの夫である創業者が他界した後、サラリーマン経営者である2代目社長が事業を引き継いでいましたが、オーナー、2代目社長ともに高齢となり、最終的には会社の解散が決定されていました。
楠本氏は「従業員の雇用を守り、長年の取引先にも迷惑をかけたくない」との強い想いから、和歌山県事業承継・引継ぎ支援センターおよび和歌山県よろず支援拠点に相談。これを受けて、当拠点チーフコーディネーターの吾妻(以下、吾妻CCO、吾妻の紹介コラムはこちら)が支援に加わりました。
優良企業ゆえに立ちはだかった事業承継の壁
初回の面談では、現状把握とともに、最適な事業承継の手法について議論が行われました。当初は株式譲渡(企業の株式を売却し、経営権を移す手法)が望ましいと判断されましたが、決算書の精査により、会社の価値が高く評価されていることが明らかに。
その結果、譲渡価格が当初の想定を大きく上回り、資金面の課題が浮き彫りになりました。支援チームはこの状況を踏まえ、より実行可能性の高い手段として、事業譲渡(企業が保有する事業の一部または全部を譲渡する手法)を提案。
当初は創業を想定していなかった楠本氏でしたが、支援チームの助言により、新会社設立という新たな一歩を踏み出す決意を固めました。
円滑な事業譲渡と新会社設⽴を実現
支援のポイント
🔶 和歌山県事業承継・引継ぎ支援センターと当拠点の連携体制
🔶 工場長による段階的・計画的な業務移行の支援
🔶 売上見通しに基づく創業計画・資金調達の伴走支援
吾妻CCOは、楠本氏とともに財務状況を精査し、事業継続の可否や譲渡契約書のひな型提供、各種契約関係の引継ぎ方法など、事業移行に必要な実務を丁寧に整理しました。
さらに、創業計画書の作成や資金計画支援、金融機関との事前調整を行い、2行による協調融資の実現に向けた支援を展開。
その結果、資金調達はスムーズに進み、新会社設立に向けた体制が整いました。
新会社設⽴による事業譲渡で地域の雇⽤を守る
こうした支援を経て、楠本氏は新会社「株式会社エイワテック」を設立し、旧会社から事業譲渡を受ける形でスムーズな事業承継を実現。
当初解散が予定されていた会社の従業員5名の雇用を維持することができ、同時に若い技術者の育成・技術継承にも取り組んでいます。
また、長年の取引先との関係も継続され、取引先の経営安定にも大きく寄与しました。

エイワテックの加工場
相談者の声「資金面のアドバイスが非常に心強かった」
「これまで⼯場⻑としての経験はありましたが、経営に関わるのは初めてのことで、何を優先すべきか手探りの状態でした。支援を通じて、事業承継や資金計画に関する実務知識を得ることができ、本当に勉強になりました。特に、資金面でのアドバイスや面談やサポートが大きな助けになり、今後の経営にも自信が持てました(エイワテック代表取締役 楠本敬弘氏)」
事業承継という選択肢
どんな企業もいつかは後継者問題、事業承継という課題に直面します。
楠本氏は、明確なビジョンと支援機関のサポートの活用で、工場長から経営者への転身という大きな壁を乗り越えました。
そして今、エイワテックでは貴重な技術と雇用が、確実に受け継がれています。
| 会社名 |
株式会社エイワテック |
|---|---|
| 所在地 |
〒649-6202 |
| 事業内容 | 金属工作機械用・金属加工機械用部分品・附属品製造業(機械工具,金型を除く) |
| 創業 | 2023年 |
| TEL | 0736-62-8335 |
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※本内容は、よろず支援拠点全国の支援事例に掲載した内容を加筆修正したものです。

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