「イトミミズの生態を生かした排水処理」を産学官で共同開発!
産学官連携の具体的な事例をご紹介します。
今回は「イトミミズを利用した排水処理」です。和歌山県での産学官連携の例として、イトミミズの生態※を生かした排水処理がありますが、ご存知でしたか?
通常、排水処理施設では、微生物を活用して有機物を分解する生物処理が行われていますが、この方法では、微生物が増え続けて余剰汚泥の処理が必要となります。廃棄物処理に負担がかかりますし、大幅なコストアップにもなってしまいます。
※イトミミズの生態とは?
主に、下水管の中や側溝、水田などに集団で生息している。生命力が強く、基本的にどこでも生息できる。水質が悪化しても生存可能で、短時間なら無酸素状態でも生きられる。世界各地に分布している。乾燥にも強く、水が無くなると塊になって身を守るので、多少水が少ない場所でも生きていける。雌雄同体で、有性生殖による繁殖を行う他、破片分離と呼ばれる体の分離からの単為生殖も行う。
出典:イトミミズ – Wikipedia
パイルの立体構造がイトミミズの住み処となり、余剰汚泥を劇的に削減
そこで、2011年に、和歌山県の排水処理設備企業のエコ和歌山株式会社が、公益財団法人わかやま産業振興財団のわかやま中小企業元気ファンド(補助金)を活用し、和歌山県工業技術センター(以下、工技)、パイル織物の企業と共に、梅干しメーカーの株式会社ウメタの排水設備をモデルに共同開発を行いました。排水処理施設にイトミミズの「すみか」となるパイル織物を沈めて、汚泥のもととなる微生物を食べさせるシステムです。
これによって、微生物を活用して有機物を分解する生物処理と比べて、汚泥を1/5まで減らすことができるそうです。現在は梅干し会社の他、県内の醸造メーカーなど食品系6社がこの設備を導入しています。更に最近は県外企業からも引き合いがあり、和歌山県から全国へ拡大しつつあります。
排水中のホルムアルデヒドを分解する技術開発も進行中
また、ミミズの代わりに別の微生物をパイル織物に付けて排水中のホルムアルデヒドを分解する技術も工業技術センターと和歌山工業高等専門学校と三木理研工業株式会社とで開発し設備稼働中です。
企業と工技との連携から生まれた素晴しい成果事例です。和歌山県の産学官連携技術が全国に拡がっていく。。。ほんと、すばらしいことです!
産学連携に取り組んだ企業(エコ和歌山株式会社)の受賞歴等
- 平成23(2011) わかやま中小企業元気ファンド補助金採択
- 平成26(2014) 和歌山県知事より、わかやま環境賞受賞
- 平成27(2015) ネイチャーインダストリーアワード受賞
- 令和2(2020) 和歌山県発明賞受賞 特許第5747192号
興味が湧いたら、財団のテクノ振興部まで
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(公財)わかやま産業振興財団テクノ振興部の科学技術コーディネーターの三井と、新事業支援コーディネーターの細川です。「大学や公設試のシーズ」と「企業のニーズ」、企業間の連携(マッチング)のお手伝いをしています。その他のことでもお気軽にご相談ください。