CASE STUDY 事例紹介

「超精密」金型製作・加工技術で世界に挑む

株式会社三晃精密

株式会社三晃精密(和歌山県橋本市)は、和歌山県・大阪府・インドネシアの3拠点で、精密順送プレス(製品を順に送りながら加工する方式)金型製作や精密金属部品加工等の事業を展開する企業です。

二輪・四輪車の電装系部品・半導体・弱電部品を得意とし、高い技術力と最新の設備で金属板を1000分の1ミリメートルという高い精度で加工します。
同社は2000年頃に中国への金型の輸出を始め、定期的な海外展示会への参加で販路を開拓。2018年にはインドネシアで合弁会社を設立し、現地で製造・販売を開始しました。コロナ禍の影響が薄れた今、順調に販路開拓を進めています。
今回、同社代表取締役の濱本浩一氏にお話を伺いました。

アップデートイメージ

「知る」のアップデート

海外現地の情報収集に、支援機関の海外進出支援施策を効果的に活用する

おススメイメージ

こんな人にオススメ!

海外販路開拓に興味がある方、現在取り組んでいる方

インドネシア現地での製造・販売に踏み切ったきっかけ

同社とインドネシアの縁は、インドネシアの現地企業から一通のメールを受け取ったところから始まります。同社の精密絞り金型の評判を聞きつけて、直接問い合わせがあったのです。

「インドネシアは日本とは国の様子も商習慣も違い、不安もありました。しかし、人が暖かく、歓迎されていると感じましたね(濱本氏)」

濱本氏は、これまでの海外での取引の時には感じなかった、アットホームな空気を感じたといいます。
しかし、その頃はまだ輸出にとどまります。海外で製造販売をすることに興味はあっても、現実では高いハードルを感じていたそうです。「弊社のような小規模な企業でもできるものなのかと。また単独出資では一億円くらいの資本金も必要です。そう簡単に踏ん切りはつきませんでした」と濱本氏は話します。

県と財団が主催する現地視察ツアーで好機を掴む

2016年に和歌山県とインドネシア商業省間で経済交流に関する覚書が締結されました。このことに関連して、インドネシア企業の社長が県内を訪れた際に、同社と現地企業の技術提携の話が持ち上がったといいます。

その後、同社は県と財団が主催するインドネシア視察ツアーに参加し、年末の展示会の場で信頼できるビジネスパートナーと出会って、2018年の合弁会社の設立に至りました。

「まず会社を作らないことには始まりません。県や財団さんの後押しが非常に心強かったです。良い情報をいただく時にはあまり警戒せずに、前向きに考えるようにしていますね。今回、機会を活かせて本当によかったです」と濱本氏は笑顔を見せます。

同社は、合弁会社を設立するまでの間に、財団から海外展開に関する情報提供や支援制度の紹介も受け、財団主催の海外ビジネスミッション(※)や海外集団出展事業『マニュファクチャリングインドネシア(2017・2018年)』にも参加しました。販路開拓をしながらの効率的な現地情報の収集が、同社の事業成長に弾みをつけています。

※ 海外企業への販路開拓等を支援するため、参加企業と現地企業との双方のニーズを踏まえて事前マッチングを行った上で、現地で視察や商談を行う事業

「マニュファクチャリングインドネシア2018」会場にて撮影(集団出展事業を活用)

「マニュファクチャリングインドネシア2018」会場にて撮影(集団出展事業を活用)

「超精密」金型製造・加工に強み

超精密金型プレートを3次元測定機で検査を行う様子

超精密金型プレートを3次元測定機で検査を行う様子

「超精密」な金型部品の数々

「超精密」な金型部品の数々

新興国の経済発展に伴う消費財の需要増や、自動車の生産台数の増加などを背景に世界で金型需要が拡大し、これまで輸入国だったアジア諸国でも金型の生産が増えています。
金型輸出大国の中国やアメリカとの熾烈な競争もある中で、濱本社長は高精度の金型製造・加工を行う企業は現地ではまだまだ少ないと話します。

「弊社の強みは、ほんの少しの差にあると思います。金型には、最後の味付けといえるような職人の世界があり、そこで驚くほど精度や仕上り具合に差が出ます。また金型部品は千差万別で、ひとつとして同じ図面はありません。図面から精度の高い金型を作る技術力の高さは、製品をご覧いただければわかります。ですから、販路開拓は、現地の展示会で、実際にご覧いただくことが一番効果的です」

最近は、コロナ禍で減っていた展示会への客足も戻り、ブースに多くの現地企業が訪れます。都度、数十件の商談を丁寧に行い、着実に販路開拓に繋げています。

現地企業とフランクに話せる人材確保が鍵

また濱本氏は、海外販路開拓のコツは、現地の人とフランクに話せる人材の確保が鍵だと話します。「昔は現地企業の窓口に日本語を話せる人もいましたが、最近は英語や母国語オンリーの人が多い印象」と述べ、同社の場合は日本語が堪能なインドネシア人の社員が活躍しているそうです。

本社工場でも、インドネシア人の方が日本語の勉強をしながら技術職として働いていました。

インドネシア人のダニィさん。早く日本で働きたく、現地の教育大学を卒業後、九州のラーメン屋で働く。技術を身につけるため、三晃精密に入社

インドネシア人のダニィさん。早く日本で働きたく、現地の教育大学を卒業後、技術を身につけるため、同社に入社

その他にも、外国人の教育実習生の受け入れも積極的に行い、外国人材の確保と育成に力を入れています。

今後の展望

7年後に現在の売上高の5億円を倍にすることを目指し、国内における営業エリアの拡大や(現在は関西から中部地方まで)、海外では、インドネシアやタイを中心に、自動車用金型部品の受注増に取り組むとしています。

また、今年、橋本市あやの台に土地を取得し、数年後には国内に点在する3つの工場の生産機能を集約する予定です。品質管理体制を整備し、自動化による生産体制の強化で、今後需要拡大が見込まれるEV部品の大規模な金型製造・加工にも対応します。

お客様の心からの「ありがとう」を言ってもらえる企業であり続けたいと話す濱本氏。他がマネできない「超精密」金型製造・加工を極めながら、世界を舞台に飛躍を続けます。

 

三晃精密株式会社 濱本浩一氏 プロフィール画像

濱本 浩一 氏 プロフィール

1963年京都市生まれ、大阪育ち
1984年  4 月 ダイハツ工業 駆動設計課にて駆動系部品の設計・製図
2年半後、空調機器の設計業務をしたのち、和歌山県の㈱寿精密に入社
1990年  5 月 大阪府河内長野市にて三晃精密を創業
1992年  6 月 商号を株式会社三晃精密とする
1996年 11月 和歌山県橋本市へ工場移転
2001年  5 月 精密プレス順送金型製作開始
2018年 10月 インドネシア 合弁会社設立
2020年  5 月 インドネシア 金型生産開始

会社名 株式会社三晃精密
所在地 〒649-7204
和歌山県橋本市高野口町小田565-1
創業 1990年
TEL 0736-44-2065
URL https://sankoseimitsu.co.jp
業種 各種精密金型部品加工、各種機械・装置部品加工、精密順送金型制作、精密治工具制作

同社が活用した「海外展示会集団出展事業」の詳細はこちら
※この記事は、2024年8月27日発行「わかやま産業通信18号」に掲載した内容を転載し、web用に改修したものです。

この記事をシェアする

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • LINEでシェアする

カテゴリ

注目ワード