地域資源活用で地域経済活性化・雇用創出へ
1992年に創業した同社は、ウッド筋工(すじこう)や間伐材二重井桁枠工などの『木材利用工法』を開発し、その普及に力を注いでいます。
同社の代表取締役の楠部勝巳氏によると、『木材利用工法』とは、土木工事に地域の木材を使い、地域経済の活性化や雇用創出を図るとともに、森林整備を促すものだといいます。
たとえばウッド筋工は、崩壊斜面や切土斜面に、地域で活用されていなかった間伐材を階段状に設置して植生環境を改善し、また、広葉樹の直根苗を地中深くに植えることで、斜面の自然復元化や安定性を向上させ、災害対策にも効果を発揮します。
楠部氏は「木材利用工法は地域資源である木材を使い、地元業者に施行を委託することで、地元を潤わせることができます」と話します。
一般的な土木工事には主にコンクリートや鋼材が使用されますが、その場合の原料は和歌山県外で製造されて持ち込まれるため、地元には還元されにくいという課題がありました。
そこで同社は、地元の林業・木材産業に還元できる工法を考え出し、それを全国に普及し、同じような課題を抱える全国の林業・木材産業の活性化に貢献したいと考えています。
「木材利用工法」でカーボンニュートラル
楠部氏は『木材利用工法』は、カーボンニュートラル実現の有効策としても期待できると話します。
「木材は、長期間に渡って炭素の貯蔵が可能であったり、製造時のエネルギー消費が少ないことが特徴です。既存の鋼製ガードレールを『木景』に置き換えれば、GHG(温室効果ガス)排出量を100m当たり1.63トン削減(製造時)し、またウッド筋工においては、従来工法と比較して、CO2排出量を1000㎡あたり、およそ52.9トン削減(製造~施工時)できます」
しかし、このように有効性が高いと考えられる『木材利用工法』にも、課題が累積しています。
「安価なコンクリートや鋼材などの原材料に比べ、高価な国内産の木材を使う『木材利用工法』は、まだまだ公共事業での工事における採用実績が多くありません。だからこそ、当社は『木材利用工法』を全国に広めて、原木の安定供給や国産の木材需要の拡大にも働きかけなければなりません」
このような想いで、楠部氏は2018年に『木製構造物研究会』を立ち上げました。その方針に賛同した企業が全国から参画し、技術の共有を行っています。
建設技術展2022近畿「審査委員特別賞」を受賞
現在『木景』は、県発注の国道・県道などに累計7000m(※2024年7月現在、9000m設置)設置され、2022年には初めて国交省発注工事(北山村付近)にも採択されました。
また、大手建設メーカーが参加する「建設技術展2022近畿」では、審査委員特別賞を受賞。機能性、デザイン性だけでなく、同社のサステナブルなものづくりへの姿勢が高く評価されています。
県内、そして全国に広がりを見せる株式会社クスベ産業の取組。その想いはどこまでも続くガードレールのように、未来へと続いています。
会社名 | 株式会社クスベ産業 |
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所在地 | 〒643-0166 和歌山県有田郡有田川町吉原429 |
設立 | 1992年 |
TEL | 0737-32-4877 |
URL | https://www.kusube.co.jp/ |
業種 | 緑化・土木工事業 環境製品販売 |
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※この記事は、2023年3月17日発行「わかやま産業通信第15号」に掲載した内容を転載し、web用に改修したものです。
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