CASE STUDY 事例紹介

島精機製作所のサステナビリティ『人にやさしく、地球にやさしいモノづくり』

株式会社島精機製作所

WHOLE GARMENT

1962年に創業した株式会社島精機製作所は、手袋編機の全自動化からスタートし、現在ではコンピュータ制御横編機のリーディングカンパニーとして業界を牽引しています。
注目すべきは、同社の代名詞ともいえるホールガーメント。セカンドスキンといわれるほどのフィット感と着心地の良さで世界中の人々を魅了しています。

ホールガーメントとは、同社が開発した横網機によって、一本の糸から丸ごとニット製品を立体的に編み上げるもので、幅広い編成テクニックにより、今までにない魅力的なニットファッションをつくりだすことができます。また、人手がかかる裁断や縫製が不要で廃棄ロスがないなど、省力化、省資源化を実現しながら、地球環境に配慮したサステナブルなものづくりを可能とする究極のニットといわれています。

今回、脱炭素社会を見据え、さまざまな分野で「サステナブルなものづくり」に挑戦する同社に寄稿をいただきました。

アップデートイメージ

「知る」のアップデート

常に新たなチャレンジを繰り返しながら、世の中にないものを創造し続ける

おススメイメージ

こんな人にオススメ!

サステナブルなものづくりに取り組みたい方

社会課題の解決を目指した事業の展開

当社の原点は、現会長である島正博が、社会課題に応えた発明を次々と成し遂げてきたことにあります。創業前には、内職をしていた母親の負担を減らしたいという思いから「二重環かがりミシン」を開発。また、作業手袋をしたまま手首が機械に巻き込まれるという甚大な事故が多発していたことを受け、すぐに着脱することができる「ゴム入り安全手袋」を発明しました。

そして、「手袋編機の全自動化」という難題を掲げて1962年に島精機製作所を設立し、その2年後には世界で初めて全自動手袋編機の開発に成功しました。これは労働環境を改善し、働く人々の安全や健康を守るソリューションでもありました。

角型手袋編機

世界初の開発となった全自動手袋編機『角型手袋編機』

以来、当社は「世の中になくてはならない企業」を目指し、常に新たなチャレンジを繰り返しながら、最高機能の製品を経済的な価格でお届けするため、世の中にないものを創造し続けてきました。

1967年には世界初となる全自動フルファッション衿編機「FAC」の誕生で横編機業界に進出し、1978年にはコンピュータ制御横編機を業界に先駆け開発しました。

1981年にはシマトロニックデザインシステム「SDS-1000」、1991年には生地自動裁断機「P-CAM」、1995年には『東洋のマジック』とも呼ばれた完全無縫製型コンピュータ横編機である「ホールガーメント横編機」を開発し、「縫製をなくす」という画期的なイノベーションを起こし業界に歴史的なインパクトを与えました。

まだ「サステナブル」という言葉はありませんでしたが、当社は今日に至るまでさまざまな知恵と工夫でダイナミックに変化する時代に対応し、「持続可能な社会」に役立つ製品・ソリューションを提案し続け業界の発展に大きく貢献してきました。

手袋製造の技術がホールガーメントでの衣服製造に進歩していく様子を描いた写真。黒背景に、4つの製品の写真が横に並んでいる。一番左側は、手首の部分を上、指の部分を下にした手袋の写真。その右側に、指先の部分を編んでいない手袋の写真。その右側に、手袋の人差し指・中指・薬指部分をひとつにまとめた製品の写真。この段階で、親指と小指部分が両袖、真ん中の3指の部分が胴まわりと、タートルネックのセーターの形状にかなり近づいている。一番右側は、ホールガーメントのタートルネックのセーター。

手袋からホールガーメントへと進化していく

ホールガーメント機

ホールガーメント機

これからの時代を担う役割に向けた強靭な経営基盤の構築

コロナ禍を背景にアパレル・ファッション業界では、従来の大量生産型ビジネスモデルに疑問を持つようになり、現状を見直し変化させていく意識が急速に高まっています。

こうしたサプライチェーン改革への理解が進みつつあることは、当社が早くから提唱してきた「適時適量生産」モデルを確立していく追い風となり、旧来のビジネスモデル変革に向けた取り組みをさらに加速させています。

そのためには、機械やシステムの開発にとどまらず、サプライチェーン全体を見据えたソリューションの提案が当社のこれからの時代におけるパーパスであり責任でもあると考えています。

例えば、デザインシステム「SDS-ONE APEXシリーズ」によるデザイン提案に加え、素材や製品のリアルな3Dシミュレーションによる「バーチャルサンプリング」を通じて、アパレル製品の企画期間を大幅に短縮することが可能となっています。

本文を補足する画像。説明文に「3Dバーチャルサンプルとホールガーメントを活用したスピーディーな企画・生産・販売は、最終的に在庫ロスゼロ、売れ残りゼロ、廃棄ゼロへとつながり、サステナブルなモノづくりを実現できます。」と書かれている。さらに、3Dバーチャルサンプルを活用したバーチャルファッションショーでは、リアルファッションショーでは伝えきれない、バーチャルならではの見せ方を提案しています。

近年、自動車や産業資材の分野では、脱炭素などの課題に対し材料の軽量化に向けた取り組みが進んでいます。その中で、金属から炭素繊維への転換といった流れが生じており、当社としてはこうした変化を事業機会と捉え、新たな市場開拓に向けての製品開発も進めています。

当社にとってアパレル・ファッション以外の分野の開拓は無限の可能性を秘めており、産業資材や医療などさまざまな業界・市場に向けて、最高機能の製品を経済的な価格でお届けするという企業活動の継続・発展のためにも、これまで培った経験やノウハウを活かしていくことで、世の中の変化に対応できる強靭な経営基盤を構築していきたいと考えています。

サステナビリティに注力した事業の展開

昨今、世界規模で地球と人類の将来を守る取り組みが始まり、これからのビジネスを推進していくうえでサステナビリティの観点が極めて重要となっています。

島精機製作所は、経済価値と社会価値の両輪を回していくことで持続的な成長を果たし、激しく変化する時代に適応していけるグローバルな企業であることを目指しています。

まず、当社は気候変動が私たちの今後の持続的成長へ影響を及ぼすことを認識し、「気候関連財務情報開示(TCFD)」への賛同を表明しました。

当社のホールガーメントやデザインシステムを核とした多くのソリューションは、環境保護に貢献できる「環境配慮型製品」であると考えており、気候変動に係るさまざまな課題への対応を検討し、アパレル製品をはじめとしたライフサイクルにおける環境負荷低減を目指した取り組みをおこなっています。

また、「よい製品はよい環境から生まれる」の信念のもと、現在の地に本社を移転して以来、工場をはじめとする敷地周辺の緑化活動について積極的に取り組み、今では敷地の約30%の緑地を確保しています。緑地の周辺は社員の憩いの場となり、さらにはお客様やサプライヤー様、近隣の皆様にも木々に親しんでいただける空間となっています。

当社は、今後もさまざまな取り組みを通じてより良い社会・環境づくりに貢献するため、社員はもとより、全てのステークホルダーの皆様とともに希望あふれる未来を切り拓いて参ります。

気候関連財務情報開示(TCFD)とは?

TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)*により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため、マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指します。

引用元:TCFDコンソーシアム公式HP

 

新しい時代に向けた企業支援

ビジネスを取り巻く環境変化のスピードが加速し、予測が難しくなってきている今、企業においてもサプライチェーンを巻き込んだサステナビリティの取り組みなどに注目が集まっています。

しかしながら、「気候関連財務情報開示(TCFD)」などの内容自体は理解しているものの、実際に進めるにあたり全体像がよく分からないという企業は少なくないと感じております。

公益財団法人わかやま産業振興財団様には、そのような新しい時代に向けた取り組みのご支援を今後とも積極的に発信していただき、引き続き県内企業のものづくりを盛り上げていただきたいと思います。

会社名 株式会社島精機製作所
所在地 〒641-8511
和歌山県和歌山市坂田85番地
設立 1962年
TEL 073-471-0511
URL

https://www.shimaseiki.co.jp/

業種 コンピュータ横編機、デザインシステム、自動裁断機、手袋靴下編機などの開発、製造、販売
従業員数 1,381名(連結従業員数 1,819名)
株式会社島精機製作所の本社社屋を遠くから撮った写真。社屋の手前には広々とした芝生と樹木がある。空は青空であり、写真左上から右下にかけて白い飛行機雲が写っている。

緑溢れる本社敷地

※この記事は、2023年3月17日発行「わかやま産業通信第15号」に「サステナブルなものづくり」として寄稿いただいた内容を転載し、web用に改修したものです。

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