刃物研磨への情熱
代表取締役の南口耕作氏は24時間365日刃物のことを考えるという生粋の刃物研磨職人です。中でも刃物の「再研磨」では、室内環境、水の温度と量、砥石(といし)の熱膨張の管理の他、刃物一つ一つの傷み方を見て角度を変えるなど、職人の経験と「勘」が必要だと話します。
「お預かりした刃物を新品同様の状態にすることは当たり前です。お客様はそれ以上を期待しているはずなので、当社は常にその想像を超えていきたいと考えています(南口氏)」
熟練職人の「勘」を機械に落とし込む
時代の移り変わりと共に多様化する刃物ニーズに応えるため、同社は刃物研磨機の自社開発や独自の製造技術開発、最新設備の導入にも余念がありません。
2023年には「わかやま中小企業元気ファンド事業」を活用して大胆な技術開発を行いました。マシニングセンタ(NC※1)を用いての製作・研磨を可能とする『特殊砥石軸(アングルヘッド※2)』の開発です。
本来、マシニングセンタは金属板の穴あけなど、「切削」に用いられる機械であるため、それを「研磨」に応用するのは業界初の試みでした。
同社は長年培ってきた刃物研磨の知識と技術、そしていわゆる熟練職人の「勘」を機械に落とし込み、より複雑な形状、そしてミクロン単位の高い寸法精度が要求される製品の製作・研磨を実現しています。
※1 数値制御のプログラミング制御によりフライス加工や穴あけ・中ぐり・ねじ加工などの各種機械加工を、自動で工具交換を行いながら1台でこなす切削用の機械
※2 マシニングセンタのツールホルダーの一種で、工具の角度を変更できるもの
国内展示会で大反響
「10年前に財団さんと知り合い、熱心に展示会への出展(国内展示会集団出展)を勧められました。当初は小規模で『裏方』のような存在の当社が出ていくような場ではないと断っていたのですが、出てみたらそれはもう凄まじい反響でした。展示会後は、打合せのためにしばらく身動きが取れなかったほどです。また、その場でさまざまなお客様からのご相談を受けたことで、『全国にこんなにも困っている人がいる』ということに気づくことができました。そこから県外のお取引様が増え始め、今では顧客の皆様のさまざまな要望に応えるため、対応業種を拡大しています」
困っている人のために
同社のスタンスは「一生懸命、困っている人のためにやる」というもの。最近では先代が行っていた木工事業者用の機械の卸販売を再開しています。今後、県内の事業者がどこも高齢化で少なくなり、機械が故障したときに買い替えや修理ができずに困る人が出てくるからだといいます。
顧客の要望に応えながら、その未来をも見据えて、同社は今日も技術を磨き続けます。
会社名 | 有限会社富士製鋸工業所 |
---|---|
所在地 | 〒640-0402 和歌山県紀の川市貴志川町北山442 |
創業 | 1964年 |
TEL | 0736-64-5582 |
URL | https://fujiseikyo.co.jp/ |
業種 | 樹脂製品の開発、自動化装置の開発 |
従業員数 | 11名 |
記事でご紹介した「わかやま中小企業元気ファンド事業」の詳細はこちら
「国内展示会集団出展事業」の詳細はこちら
※この記事は、2024年3月26日発行「わかやま産業通信17号」に掲載した内容を転載し、web用に改修したものです。
「知る」のアップデートは一記事から。みなさんのビジネスを成長させる『知恵』を随時お届けします!