CASE STUDY 事例紹介

販売先多角化に成功!『隙間』に活路、シール製品メーカーの挑戦

正和産業株式会社

代表取締役社長 笹井 宏祐 氏

ガスケット・パッキンといったシール製品は、製造現場の機械の中で、縁の下の力持ちを演じています。高精度のシール製品生産を請け負う老舗メーカーである正和産業株式会社(和歌山県有田市)は、ここ10年で顧客数を右肩上がりで増加させることに成功し、逆風の時代を力強く乗り越えようとしています。

同社が長年培ったものづくりへの姿勢と、近年取り組む販売先の多角化戦略について、代表取締役社長 笹井宏祐氏にお話を伺いました。

 

アップデートイメージ

「知る」のアップデート

一社依存型体質から、企画・提案型企業へ転換する

おススメイメージ

こんな人にオススメ!

展示会出展について検討している方、自社の強みを見つけたい方

品質にあらわれる堅実さ

シール製品は、使われる機械や使用条件によって必要となる性能が全く異なります。

同社は千差万別の要求に応える材料知識、加工ノウハウを蓄積しており、量産品から特殊仕様の製品まで幅広く対応。特に、樹脂製品は、きめ細やかな温度管理を行い、高寸法精度の加工を実現しています。出荷にあたっては目視と機械による全品検査を徹底しています。

品質を保ち、納期を厳守し、コミュニケーションを大切に。言うは易し行うは難しの『当たり前』を実行し、昭和51年の創業以来、信頼と実績を一歩ずつ積み上げてきました。

正和産業株式会社が手がける、多種多様なシール製品を机の上に並べた写真。主にリング状の製品だが、大きさや厚み、色がそれぞれ異なっている。

ガスケット・パッキン製品例

工場内での検査作業の様子を映した写真。女性の作業者が、黒いリング状のシール製品を小さな板の上に並べ、目視と拡大鏡を用いて不良がないかを確認している。

検査工程、出荷する製品はすべて検査。小さな不良も見逃さない。

危機を乗り越え、強く柔軟に

シール製品を生産・納品する、大手メーカーの協力会社としてスタートした同社は、高度経済成長の後押しもあり、順調に業績を伸ばしていきました。

有田市の自社工場だけでは手狭になり、御坊市に新たに『株式会社ホロン精工』を設立。正和産業株式会社と株式会社ホロン精工は緊密な関係を保ち、現在に至るまで、二人三脚でシール製品製造を行っています。

株式会社ホロン精工の社屋写真。

株式会社ホロン精工

プレス機のフタを開け、金型に材料をセットしている様子。この工程では、熱と圧力を加えて製品を成形する作業を行っている。

プレス工程、金型に材料をセットし、熱と圧力を加えて製品を成形する作業

同社は早い段階で、発展めざましい中国に注目し、2003年に現地法人を設立しました。しかし、異なる商文化、人集めに教育など、多くの課題に苦戦し、最終的には撤退を余儀なくされました。現地法人の立ち上げを担当したのは、当時総務担当であった笹井社長。

「会社立ち上げの大変さを知りました。あの苦労は、今の経営にも生きています」

続くリーマンショックによる急速な景気後退で、取引量が70%減となり、1社依存での経営の限界を痛感した同社は、自らのブランドを生かし、企画・提案型の企業として自立する決断をし、新規の取引先開拓をスタートしました。

商談会の活用

「わかやま産業振興財団の集団出展事業を初めて使ったのは2012年でした。最初の数年はなかなか成果が出ませんでしたが、予想外の収穫がありました。一緒に出展した県内メーカーどうしの繋がりができたのです」

こういった県内異業種のメーカーとの交流が、新たな取引につながったケースもあったと、笹井社長は語ります。

毎年出展することで着実に新規顧客を獲得、10年前は1社だった取引先が、今では70社を超えました。その分野も、自動車、医療、食品、釣具など多岐にわたります。

「展示会では生の声が聞けます。様々な企業と対話することで、1社依存のときはわからなかった『市場』が見えてきました」

大手にはできないことを——目指すはグローバルニッチトップ

「手間のかかる複雑な形状の製品や、中・少量の受注といった、大手が対応を渋る『隙間』こそが市場ではないかと気づきました」

同社は設計・金型製造も含めた一貫生産が可能な体制があり、ゴムと樹脂の複合品も、自社内で製造し、組み合わせた状態で納品できます。

フットワークの軽さを活かして積極的に営業し、試作の依頼も多くこなしてきました。時には先方が納得するまで40回近く試作を繰り返したケースもあります。努力が実を結び、実績を聞きつけた大手メーカーからも声がかかりはじめました。今では製品の90%がオーダーメイドとのこと。

いずれは、向こうから買いに来てもらえるような企業にしたいと笹井社長は話します。目指すはグローバルニッチトップ企業です。

未来に向けて

「新規顧客増も、高品質製品も、従業員のみなさんの努力のおかげです。安心して、満足して働いてもらうためにも、新たなビジネスを展開していきたいです」

同社はシール製品生産に注力しつつ、シール製品にとらわれない、新たな分野にも挑戦しています。現在は、大手次世代モビリティ企業の試作・開発に参加・協力し、そのための新工場を4月から稼働予定です。

多くの困難の中でも揺らがず、こつこつと築いてきた同社の信頼と技術力は、シール製品で日本の製造業を支えるだけでなく、産業を新たな展開へと導く、心強いパートナーとなるに違いありません。 

株式会社ホロン精工の工場内で撮影した、代表取締役社長 笹井 宏祐 氏のバストアップ写真。

代表取締役社長 笹井 宏祐 氏

笹井  宏祐氏プロフィール

1968年 大阪市生まれ
専門学校卒業後、株式会社クラレ入社
2000年 正和産業株式会社に入社
2003年 中国法人「天津正和密封 制品」の設立を担当
2013年 和歌山県「1社1元気技術」企業登録
2014年 取締役就任
2019年 代表取締役就任 

会社名 正和産業株式会社
所在地 〒649-0304
和歌山県有田市箕島812-9
創業 1964年
TEL  0737-82-4151
URL

https://www.big-advance.site/s/145/1316

業種 合成ゴム製シール部品(パッキン・ガスケット類)
合成樹脂製シール部品(パッキン・ガスケット類)
従業員数 50名

記事でご紹介した「国内展示会集団出展」の詳細はこちら

※この記事は、2024年3月26日発行「わかやま産業通信17号」に掲載した内容を転載し、web用に改修したものです。

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