自分にしかできないことで和歌山の魅力を発信
和歌山県白浜町生まれの矢倉さんは、神戸製菓専門学校を卒業後上京し、パティスリー『アヴランシュ・ゲネー』にて上霜考二氏に師事。学べば学ぶほど奥深いフランス菓子の歴史に魅力を感じる一方で、ふるさとである和歌山県の歴史は、ほとんど知らない自分に気が付いた。
「東京のお店でたくさんのパティシエたちと仕事をするなかで、自分にしかできないことは何なのかと考えていた。そうして自分を振り返ったとき、出身地である和歌山の魅力を研究することで、自分にしかできないことが見つかるのではないかと思った」と話す。
地域ならではの魅力を探りながら、東京での多くの学びをアウトプットすることで、自分にしかできないことを形にしたいと思い、白浜町に戻ることを決めたという。
熊野本宮との出会い
「地元の人々に喜んでもらえることはなにか」と、東京で修業していた頃から思案していたという矢倉さんは、白浜町のホテルで3年間勤務する中で、本宮町のお茶農家の倉谷夏美さんと出会った。
茶園の手伝いを通じ、本宮町の居心地のよさ、土地と人の魅力を知り、ここに住みたいと思うようになったという。
和歌山の農家や製菓業者の地元愛にも触れ、自らの経験や技術を地元に還元すること、地元の人々と共になにかをするということにも面白さを見出した。
本宮町での新たな生活の中で、「身近なお菓子屋さんならば、実際の生活で喜んでもらえるのでは」と感じ、熊野本宮での創業を決意する。
財団との出会い
創業にあたっては、公益財団法人わかやま産業振興財団の「わかやま地域課題解決型起業支援事業」を活用して『choux』をオープンした。「財団には親身になって色々な相談に乗っていただき、本当に感謝しています」と笑顔をのぞかせる。
「本当の美味しさ」を求めて
同時期に出演したテレビの反響も大きく(日本テレビ「幸せボンビーガール」)、開業以来、全国から訪問客が訪れている。ただ、その分、完売で買うことができずに肩を落とすお客様も多く、そのときには矢倉さんはいつも申し訳ない気持ちになるという。
しかし、無理をすれば生産量を増やすこともできるが、同店では開業当初から一貫してクオリティを重視してきた。「本当に美味しい」という信頼の品質を維持するために、数知れない細やかな工夫を凝らす製菓の仕事では「常に探偵のように疑いの目を持ちながら、製菓づくりの環境と条件を厳しくチェックしている」と矢倉さんは話す。
現在は製造スタッフの育成に力を入れながら、地域のフルーツを用いた季節限定の新メニューの開発に取り組んでいるそうだ。
起業をめざす人へ
矢倉さんに起業をめざす人へのメッセージを伺った。
「物事を始めるにあたり様々な人と話す中で、他者の意見を聞くことはもちろん大事ですが、時に自分に必要のない意見は流していくことも必要です。その判断が自分で出来るかどうかが大事なのではないでしょうか」
「本当の美味しさ」を追求する矢倉さんの想いと熊野の土地との融合。これからどんな「美味しさ」が生まれるのだろうか。
矢倉 実咲 氏 プロフィール
1992年白浜町出身。2011年神戸製菓専門学校を卒業後、東京のパティスリーで5年間勤務。2016年に帰郷し、白浜町のホテルで3年間パティシエとして勤務。2019年に本宮町へと移住し、2020年「choux(シュー)」を開業。
美味しいと話題のシュークリーム。ホールケーキやドリンクメニューあり。テイクアウトのお店だが、テラススペースがあり、休憩することもできる。
会社名 | choux |
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所在地 | 〒647-1731 和歌山県田辺市本宮町本宮1571番地15 |
創業 | 2020年 |
TEL | 0735-30-0801 |
URL | https://choux.cc/ |
業種 | 菓子製造業 |
同社が活用した「わかやま地域課題解決型起業支援事業」の詳細はこちら
※この記事は、2022年8月31日発行「わかやま産業通信14号」に掲載した内容を転載し、web用に改修したものです。
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