次世代型「ペロブスカイト太陽電池」
ペロブスカイト太陽電池は、2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明したものです。硬い結晶シリコンをスライスして作る従来のシリコン太陽電池と異なり、ペロブスカイト(灰チタン石)の原料をインクとして、柔軟性のある基板への塗布で作られるため、フィルム状で「薄くて軽くて曲げられる」という特徴を持ちます。
フィルム状の太陽電池は、荷重の問題でシリコン太陽電池では設置が困難だった場所にも設置できるうえ、シリコン太陽電池並みの高効率を実現します。さらに、レアメタルや高価な貴金属を使わず低コストでの製造も可能なため、今後、現在主流のシリコン太陽電池のように流通し、再生可能エネルギーの総発電量を増やすことが期待されています。
世界各国で競って研究開発が行われる中、同社もまた、宮坂研究室(桐蔭横浜大学)と共同で研究開発にあたっています。
「6年前に、ペロブスカイト太陽電池への塗布がスピンコート(回転遠心力を利用した塗布装置)で行われていることを知りました。それならば、非接触でデジタルパターン形成が可能な当社のインクジェット印刷技術で、スピンコートでは対応できない未知の領域の太陽電池を作成できるのではないかと、宮坂力特任教授に提案いたしました(代表取締役 釜中 眞次氏)」
活用方法はさまざま。アイデア次第で可能性は無限大
その後、同社はプリント基板の回路形成用に金属ナノ粒子インクによる印刷を行うインクジェットプリンターを開発し、このプリンテッドエレクトロニクス技術をペロブスカイト太陽電池の開発に応用しました。
そうしてできたものが、2022年に発売したペロブスカイト対応インクジェットプリンター「KGK JET WM5000F」です。
卓上サイズの軽量・コンパクトなプリンター装置で、W91×D55mmの印刷範囲で小型のペロブスカイト太陽電池の発電層を印刷します。
たとえば、この発電層を商品陳列棚の電子値札に取り付ければ、室内(低照度環境)においても発電し、配線いらずで値札の表示が可能になります。
「小型ペロブスカイト太陽電池の用途は様々。アイデア次第で可能性は無限大に拡がります(釜中氏)」
紀州技研工業のSDGs
釜中氏は今後も、ペロブスカイト太陽電池に適したインクやプリンターの開発、印刷技術によって、国内での実用化に貢献したいといいます。
またSDGsについては、「次世代へのバトンタッチを悪い形でやるわけにはいきません。当社は環境にやさしいインクの使用や開発、また脱炭素に効果的なペロブスカイト太陽電池製造プロセスの開発で、SDGsに取り組んで参ります」と話します。
同社は環境に優しい次世代型太陽電池の実用化を通じて、次世代に良い形でバトンタッチをしようと新たな技術開発に挑戦し続けています。
会社名 | 紀州技研工業株式会社 |
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所在地 | 〒641-0015 和歌山市布引466番地 |
創業 | 1968年 |
TEL | 073-445-6610 |
URL | https://www.kishugiken.co.jp/ |
業種 | 生産ライン上で段ボール、建材、パーツ、食品等に賞味期限、ロット番号、ロゴマーク、バーコード、QRコード等を自動的に印字するインクジェットプリンターとローラーコーダー、印字検査装置、コンベア・制御盤の関連設備、インクおよびソフトウェアの製造・販売 |
従業員数 | 620人(2020年度) |
同社が同技術のシーズ発表を行った「テクノビジネスフェア」の詳細はこちら
※この記事は、2023年3月17日発行「わかやま産業通信15号」に掲載した内容を転載し、web用に改修したものです。
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