CASE STUDY 事例紹介

声を聴いてカタチにする商品開発。「一通のお客様のハガキが新市場を生み出す」

株式会社 サンコー

代表取締役角谷太基氏

「人の心に貯金する」を経営理念とし、国内製造にこだわり、独自の特殊素材で床に置くだけでずれないフロアマットや、洗剤いらずで洗えるクリーナーなど、生活者を支える高品質な商品を生み出している株式会社サンコー(和歌山県海南市)。

同社のアイデアの源泉は、お客様や社員の「声」だといいます。企業にとって貴重なデータといえる「声」を活用した商品開発を行い、最近はEC事業の多角化で国内外で販路を拡大しています。

今回、同社代表取締役の角谷太基氏にお話を伺いました。

株式会社サンコー商品イメージ

アップデートイメージ

「知る」のアップデート

お客様の「声(データ)」を収集し、潜在的なニーズを見つける

おススメイメージ

こんな人にオススメ!

新商品開発したい方、データ活用したい方

一通のお客様のハガキが新市場を生み出す

――どのようにしてお客様の声を収集し、また活用しているのですか。

弊社が提供する生活サポート用品は、お客様の生活スタイルや住設機器の変化に素早く適応することが求められます。そのため、弊社では約25年前から、商品にハガキを同封して、商品の感想やお客様のお困りごとを聴く対話型のアンケートを行っています。年間で二千通ほどお客様からご返信をいただけるのですが、弊社ではそれをボイスカードと呼んでいます。ボイスカードは社内で共有し、光るものは商品開発会議の議題にあげています。そうして生まれた商品は、広く万人受けするものではないことも多いですが、ある一定の層のお客様にとっては、切実なお困り事を解決する重要な手段になります。 だからこそ、弊社は『一人』のお客様の声に真摯に耳を傾けています。また、この商品開発の面白さは、たった一通のお客様のハガキが新市場を生みだすことがあるということです。ボイスカードにはまだ世の中にない未知の商品への潜在的なニーズが隠れています。弊社はそれを見つけ出し、今後もお応えしてまいります。

株式会社サンコーあてに届いたボイスカードの現物写真。木目の机の上に、6枚のボイスカードが扇形に広げた状態で置かれている。

実際のボイスカード。お客様からの感謝の言葉や切実な困りごとが綴られている。

おしっこ吸い取りパット開発の経緯を示した図。ボイスカード上部には、サンコーからの「弊社の商品をご購入いただきありがとうございました。他に日常の困りごとがございましたら、教えていただけますでしょうか?」というコメント。下部は30代主婦からの回答として「我が家には小さい男の子がいますが、毎日のトイレの時におしっこモレで便器の前方に尿が垂れてしまうので困っています。」というお悩みが書かれている。このボイスカードから矢印がのび、同社商品「おしっこ吸う~パット」の写真を示している。商品の上にはフキダシがあり、「この声からおしっこ吸い取りパットを開発」と書かれている。

「おしっこ吸い取りパット」の使用イメージ写真。エプロン姿の女性が、便器のフタを開けた状態で、パットをフチ部分に貼り付ける様子が描かれている。

お客様の声から開発した『おしっこ吸い取りパット』の使用イメージ

――ボイスカード以外にも、お客様の声を聴く取組をされていますか。

ECサイトのレビューや、LINEグループ、展示会やイベントでつながるお客様の声も貴重な情報源と考えています。お声を頂いたお客様に別の商品を送ってさらにフィードバックを頂いたり、訪問して実際に現場を見せて頂いたりして、商品開発のヒントにさせていただくこともあります。お客様とつながり、常にお客様視点に立つことが、なによりも大切だと考えています。

システム改善やデータ活用は現場から。「改善が改革へ」

――社内のデジタル化やデータ活用についても教えていただけますか。

弊社では4年前から、システムに精通した社員をトップに据えて、社内のシステム改善を進めています。具体的には、売上日計表の作成や販売管理システムデータベースのバックアップ、在庫調査データの一括処理の自動化などです。また、管理本部から現場、EC事業まで、売上情報や在庫情報などの一気通貫のデータ連携を行い、社内の情報格差も軽減しました。このことによって、本部は現場に情報共有するための資料作成やデータの転記作業が、現場はデータを取りに行くための作業がなくなり、生産性が向上しました。さらに、現場が生のデータを活用したスピーディーな商品提案や受注対応にも活かすようになっています。正直なところ、これまで本部でクローズで扱っていた情報を公開することに抵抗がなかったとはいえませんが、システム責任者が現場の社員から声を吸い上げ、部門を超えた意見交換の場や課題の共有を行ったことで実現しました。システム改善やデータ活用の主人公は現場の社員だということですね。この取組で、トップダウンではなく、社員が自分事として捉えて、隣の人や部門を巻き込みながら様々な声をあげてくれたことで、『改善が改革へ』と変わっていきました。今後は、『ボイスカード』のデータベース化など、データとデジタルの力をさらに活用してまいります。

ECで付加価値を表現し、SNSでお客様とつながる

――多くの販売チャネルを展開されている理由はなんですか。

現在、楽天やアマゾン、自社ECなどの8つのチャネルを運営しています。チャネルごとに抱えているお客様が違うので、どんどん増えている状況です。現在は海外を含めて、売上構成比の約4割がEC関連になりました。昨年から担当者を2名から7名に増員して、さらに注力しています。

――自社ECに力をいれる理由を教えてください。

弊社は「付加価値のある素材開発、付加価値のある商品開発、付加価値のある販売」にこだわっています。そういう意味では、自社ECは価格競争に巻き込まれずに、付加価値を表現できる貴重な場だと捉えています。また現代は20~30代の約8割がネットを通じて商品を購入する時代だといわれています。若い世代の方にもぜひご利用いただきたいとの想いで、ECのほか、SNSを通じたイベントの開催、キャンペーン情報の配信などを積極的に行っています。

サンコーECサイトのトップ画面のスクリーンショット。トイレの画像とおしっこ吸う~パットの画像が貼られ、文字情報としてに「トイレ掃除がラクになる。流せるおしっこ吸う~パット」「便座裏の汚れ…床への飛び散りに!」と書かれている。

同社のECサイト『いいながいっぱい三幸商店』

――最近はライブコマースも始められたそうですね。

はい、本社に配信用のスタジオを作って、月に4~5回配信しています。世のトレンドを掴みにいく。何でもやってみる。そんなチャレンジ精神を大切にしています。

本社1階の専用スタジオで、ライブコマース配信の準備を行う社員の様子。カメラの三脚を調整したり、照明機材の準備を行っている。

本社1階の専用スタジオで、ライブコマース配信の準備を行う社員の様子。配信時はキャンペーン効果も相まって、商品の購入が殺到することもあるそうだ。

財団のセミナーでビジネストレンドを学ぶ

――財団の事業を活用した感想を教えてください。

これまで、商品開発や市場調査などで、わかやま産業振興財団様の事業を活用させていただきました。財団様には、最新のビジネストレンドを反映したセミナーや人材育成支援の講座などの有益な情報をくださることに非常に感謝しています。

人の心と物を満たして、人を幸せにする企業へ

――御社の今後の展望を教えてください。

弊社はお客様に寄り添い、その声を聴くことで、家庭用品から生活サポート用品全般へと事業ドメインを拡大してまいりました。創業60周年を迎え、今後もベンチャー精神を忘れず、『人の心に貯金する』ことを実践し続けます。お客様、社員、そして地域の皆様の心と物を満たして人を幸せにする、これが弊社のビジョンです。

株式会社サンコー 代表取締役 角谷太基氏のプロフィール写真。

代表取締役 角谷 太基 氏

角谷 太基 氏 プロフィール

1965年生まれ。
大学卒業後、大阪の中堅総合商社入社
1991年 父が創業した株式会社サンコー入社
2009年 代表取締役社長就任
2015年 稲盛経営者賞製造グループ 第二位受賞
2020年 地域未来牽引企業認定
2021年 グッドカンパニー大賞特別賞受賞 

会社名 株式会社サンコー
所在地 〒640-8481
和歌山県海南市大野中715
創業 1962年
TEL 073-482-5011
URL

https://www.sanko-gp.co.jp/

業種 生活サポート用品の開発・製造・販売
従業員数 140名(グループ全体)

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※この記事は、2023年8月24日発行「わかやま産業通信16号」に掲載した内容を転載し、web用に改修したものです。

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